住宅は「器」から「場」のデザインへ コミュニティーをデザインする
http://www.asahi.com/housing/column/TKY201107080167.html
住宅は暮らしの器である。小さな器が集まる集合住宅も、郊外の住宅街もまたひとつの暮らしの器と考えることができる。その器の中で、家族や向こう三軒両隣、そして近隣コミュニティーと共に私たちの日々の暮らしは繰り広げられている。その暮らしの器をデザインするのが建築家の仕事なら、その器の中身にもまなざしを向けて人と人をつなぐ仕掛けも同時にデザインしてみてはどうだろう。その試みを僕は「コミュニティーデザイン」(前回コラム参照)と呼んでいる。
コミュニティーデザインの目的は、21世紀の現代生活にふさわしい新しいかたちのコミュニティーを創出し、同時にそのコミュニティーを醸成させる新しいかたちの居住空間をデザインすることにある。
現代日本の住宅は、耐震、防火、高気密・高断熱仕様、設備技術など、確実に進化し続けてきた。でも、その住まいづくりの在り方は、居住空間という「モノ」としての「器」を技術開発し、特に商品化住宅はそれに表層的なデザインをほどこすことだけでしかなかったように思う。いま、居住空間という「モノ」としての「器」をデザインする以上に、居住空間で繰り広げられる「コト」としての暮らしの「場」を積極的にデザインすることが求められている。コミュニティーデザインは、そのひとつの方途だと考えている。
「器=モノ」のデザインから「場=コト」のデザインへ、それは現代日本人の価値観の変化の表れであり、これからの日本の経済・文化の行方をも示唆しているように思う。特に東日本大震災以降、それは顕著になったのではないだろうか。この夏の猛暑の中での様々な節電方法も「場=コト」のデザインのひとつだし、人と人の関係のよりどころとしてのコミュニティーへの関心の高まりもその表れだろう。
僕がコミュニティーデザインを本格的に試みたのは「シティア」という大規模マンション(千葉県我孫子市)の設計監修をしたときで、いまから10年程前のことになる。「シティア」は、住戸総数851戸の巨大な板状形式の高層集合住宅で、もはやひとつの街であり、超高密度な立体都市と言ってもいい。大規模マンションは、主に21世紀になってから登場する日本の新しいかたちの集合住宅である。
