Breathing Sui-gun line 呼吸する水郡線

ローカル路線沿いの光の作品。

山間部のこの町の夜の闇は深い。しかし、闇が深ければ深いほどに、そこに生きる人々はより光り輝くべきだと私は考えた。作品は、この街の中心を走るローカル線の数少ない利用者、その中のたった8人を対象にした、特別な風景の経験である。ローカル線沿線4箇所に当てられた光が合計8人の住民の呼吸のデータに合わせてゆっくりと動き続ける。

Light works along with rural train line.

It is easy to find pitch black darkness during nights on this small town in mountainside of Ibaraki. I thought that the more we sit and wait within darkness, the more we shall see every individual in there shines. Hence this artwork is a special kind of experience of night scape for just 8 individuals from those who commute or live on and around the train line. 4 lighting sites along with the train line slowly blink according to the actual data of breathing of that 8 local residents.

山間部を走るローカル線、水郡線は、茨城と福島を繋いでいる。町の住民の多くは学生時代、通学のために鉄道を毎日利用するが、やがて車に乗る年齢になると離れていく。あるいは、都市部へ移住し、いずれにせよ大人になるとほとんどこの路線に乗ることはない。その結果、水郡線の利用客はそのインフラの維持に充分な数とは言えない。水郡線で通学する学生の多くは長距離を乗り、山奥から街へ、街から都市へ往復する。早朝の闇の中を学校に向かい、夕焼けの後に帰宅する。沿線の駅の多くは無人化され、闇の中に駅舎やホームの構造物が沈んでいる。

この風景の中で鉄道に乗り生き続ける学生たち、その周辺で生き続ける人々に、アート作品の展示、という制限時間つきの特別な機会をつかって作家が提供できるのは何だろうか。私は、今ここで彼らが生きている一瞬を、闇のなかの光で彩り、その記憶をもってもらうことが私にできるささやかな貢献だと考えた。そして、やがて彼らが鉄道から離れるその日のずっと先の時間と空間までその記憶を持って行ってもらうため、そのための体験装置が作品の機能だと考えた。

水郡線で通学する学生や、駅周辺で生活する人々の呼吸のリズムをインタビューを通じて取得し、駅舎やホームの構造物を夜と早朝の闇のなかで呼吸のデータを使ってゆっくりとした明滅で照らし出した。インタビューの対象者には、彼らの通学や生活のルートのなかで自分の光が見えるように駅舎やホームの空間を中心に作品を構成し、どの駅の何時の照明デザインに自分の呼吸が使われているのかを知らせている。結果として私は、水郡線利用者のほんの一部が「自分の光」に日々接する数ヶ月間を設計制作した、ということになる。