Remote Furniture  

Overview 

Two rocking chairs are installed on the floor facing each other.The audience sees no interactions between chairs. The interaction is triggered when two people from the audience sit in the chairs and rock.

Each chair has a sensor and motor.These devices enable mutual interaction between the chairs. They allow one to feel the other’s rocking action. The aim of “Remote Furniture,” then, is to create direct and tactile touch.

I arrived at the idea by first considering the meaning of talking. Secondly, I wondered what kind of environment supports it and what kind of rules are behind it. In “Remote Furniture,” two chairs facing each other represent the environment, and the type of interaction represents the rules of talking.

2つのゆり椅子が床に向かい合わせに置かれています。

観客が、ただ作品を眺めているときにはなにも起こりませんが、2人の観客がこの2つのゆり椅子に座り、揺らしはじめると、椅子に座った観客同士の間にインタラクション(やりとり)が起こります。それぞれのゆり椅子にセンサーとモーターがはいっているので、こういうことが起こるのです。

この、ゆり椅子に組み込まれたセンサーやモーターが、ゆり椅子の間に相互のやりとりを作り出すのです。そして、観客はお互いの椅子をゆらすアクションを互いに感じることができます。”離れて、でも繋がった椅子”は、このように直接的な触覚を通じたふれあいを作り出すことを目的にした作品です。

私は、まず最初に、日常のなかで会話をすること、またはその状況にどういった意味があるのかを考えてゆくうちに、この作品を考えました。そして次に、いったいどういった環境が人の会話、コミュニケーションをサポートしているのか、また、その背後にどんなルールがあるのかということを考えてみたのです。

作品”離れて、でも繋がった椅子”では、2つの向かい合わせに置かれた椅子がこの環境をあらわしていて、椅子の間に起こるインタラクション(やりとり)がこのルールを表しています。

Tech 

The two chairs have a tilt sensor and a linear motor, and are both connected to a PC running control software. When someone rocks one of the chairs, the tilt sensor detects the inclination and transmits the data to the other chair through the PC. The motor in the other chair then causes it to rock.

Usually this kind of remote object is designed with a Master-Slave (one-way) method. But in “Remote Furniture,” full duplex (two-way) interaction is realized because it feels more natural. It’s more like what we would imagine a telephone-like system to be like, which televises and exchanges tactile touch or motion of the body.

2つのゆり椅子はそれぞれ傾きセンサーとリニアモーター(前後に動くモーター)を内臓しています。そしてそれぞれ、それをコントロールするソフトウェアが動いているコンピュータに繋がっています。誰か観客が椅子に座ってゆらすと、傾きセンサーがそのゆれを検知して、どのくらいの角度になっているかをこのコンピュータを経由してもうひとつの椅子に信号として送るのです。そして、もう一方の椅子に到達した信号は、リニアモーターを動かし、それが椅子の座面の動きとなって表現されます。

たいてい、こういったリモートコントロールのしくみをもったものは、マスター・スレーブ(主人・召使)という言葉でいわれるような一方が他方を常にコントロールするしくみで動いています。

でも、作品”離れて、でも繋がった椅子”では、完全2重(2方向、コンピュータ用語で、コミュニケーションが双方向で対等に行われている状態をいう)でインタラクション(やりとり)が起こるようになっています。そのほうが、作品のコンセプトに対して自然な解決法だからです。もしも”ゆれ”を伝える電話のようなものがあったらどんな風に実現されるか?ここではそういう風にしくみが作ってあります。体に触れているような感触や、体の動きを2人の観客が交換して、お互いに感じるようにできるようにです。

Background 

“Remote Furniture” was originally designed towards recent situation of public spaces around Tokyo and shown there. Following description is about why the artist created the artwork for the particular situation.

I have designed “Remote Furniture” to make unexpected encounters between passersby in public spaces. Unlike westerners, people in Japan doesn’t have a custom of talking to other passersby in public spaces such as plazas or main streets.

Although there are many public spaces in Japan, many of which are built in post-war style, we Japanese do not have a trandition of activity using these spaces. We are still trying to adopt traditional usage of space to those “imported” from other cultures. The spaces look the same but feel different from those in the western world.

The Japanese have a long tradition of forming communities based on small streets. So it looks to them that the new big public spaces some only commercial or transportation purposes and maybe some street performances but do nothing for the community. Perhaps Japanese people are too shy to come face to face with an unfamiliar person in a public space.

So it was interesting to see what happened when “Remote Furniture” was shown is some public spaces in Japan such as an underground passage or an indoor shopping mall. Because the object were chairs, passersby became curious about them and eventually started sitting, rocking and playing with them. And when these people realized what was going on between the chairs, they finally communicated with each other in funny and tactile ways.

More conservative means of communication such as talking and gesturing became more open to them because the chairs allowed them to face each other like they were used to, when they talked over a coffee table in a cafe or a kitchen table in their homes.

Some of the audience even tried to develop ways of playing through this means of communication. This artwork seemed to help remove people’s shyness in public spaces. Hopefully, this artwork can make the unseen potential of public spaces more visible and provide an experience of communicating to those people who have not experienced it before. I think this is the potential of public art.

私はこの作品”離れて、でも繋がった椅子”を、公共空間(街のひろばなど)で、通りすがりの人たちの間に偶然の出会いを引き起こすようなものとしてデザインしました。

西洋の都市空間で起こることとは違って、日本では広場や大通りであっても、通りすがりのひとに話し掛けるような文化がない。そこでこういった作品を作ってみたのです。もちろん、特に戦後の日本の町には西洋風にデザインされた広場があります。でもまだ日本人はその場所をどういう風に使ってゆくかをよく知らない、あるいは認識していないようなのです。つまり、街の要素を輸入してみたものの、その使い方についてはまだ試行錯誤中なのではないでしょうか。そんなことからでしょうか。外国にいって帰ってくると、一見みかけは同じようにデザインされた街であっても、そこから受ける印象は大分ちがいます。

ちょっと視点を変えてこのことを考えてみると、日本人は裏路地や近所づきあいのような形でコミュニティを作ってゆく伝統をもってきたことに気づきます。そんなわけで、大きな公共空間、たとえば広場は、商業的な目的や交通を円滑にする目的では使われていても、たまに大道芸人やストリートミュージシャンがいるくらいで、なにもコミュニティのためにあるわけではないようなのです。ひょっとしたらたぶん、日本人は広場なんかであっても、見知らぬ人と声をかけあうようなことをするのがちょっと恥ずかしいのかもしれません。

そこで私はこの作品”離れて、でも繋がった椅子”を、地下鉄の地下道や大きなショッピングモールの屋内広場などで展示してみたのです。
すると、この作品は”椅子”からできあがっているので、通行人はなんだか興味をひかれ、ついに座ってしまったりしました。そして椅子を揺らし、作品を通じて遊びはじめたのです。そしてそのうちこの作品がどういうインタラクションを引き起こすのかを理解すると、とうとう他の通行人たちとこの、ちょっと変わった触覚的なコミュニケーションを楽しみはじめました。

もちろん、触覚を通じたものだけではなく、普通(?)のコミュニケーション、つまり顔をつきあわせて会話することに対してもこの作品は開かれています。2つの椅子が向かい合わせに置かれていること。それは私たちがごく普通に喫茶店やキッチンのテーブルと椅子に腰をおろして話しをするときの環境と同じなんです。

観客のなかには、この作品を使ってオリジナルの遊び方を発見してしまうような人たちもでてきました。どうも、この作品”離れて、でも繋がった椅子”は、広場などの公共空間のなかで、人の恥ずかしがる、あるいは引っ込み思案な気持ちを取り去ってしまうような効果があるようです。私は、この作品が公共空間のまだ明らかではない可能性を見えるようにしたり、普段知り合うことのないような人たちの間に、今までは起こらなかったコミュニケーションの体験を提供してゆくような役割をもてればと思っています。

そして、そういったことこそ、パブリックアートの可能性なのではないでしょうか?